2007年09月16日

SI Ukulele を直してみる

オアフ島の個人ビルダーが製作する「SI Ukulele」というウクレレがあります。
「エスアイ・ウクレレ」と読みます。「シ・ウクレレ」ではありません。(すみません。)

SI-1.jpg SI-2.jpg

過日、このウクレレを所有されるOさん(古くからのNUA会員でもあられます)から調整&プチ改造の依頼を頂きました。
改修項目は、

1:ブリッジ溝より薄いために傾いてしまっているサドル(ブリッジ)の修正
2:サドル素材の変更(樹脂をエボニーと牛骨に)
3:ブリッジピン素材の変更(樹脂をエボニーに)
4:ブリッジにパーツ追加(テンション変更と外観向上)
5:1弦から4弦に向かって低くなっている第3フレットの調整
6:ポジションドット素材の変更(樹脂をアバロンに)

細かな内容も書き出すと上記の様な内容となります。
大切なウクレレを私に託されるなんて、Oさんは実に懐の大きな方であります・・・。
っしゃあ、頑張りますよ!


1:ブリッジ溝より薄いために傾いてしまっているサドル(ブリッジ)の修正
2:サドル素材の変更(樹脂をエボニーと牛骨に)
3:ブリッジピン素材の変更(樹脂をエボニーに)
4:ブリッジにパーツ追加(テンション変更と外観向上)


まずは1〜4までザザッといく事にします。

SI-3.jpg SI-4.jpg

手付かず状態での撮影を完全に忘れておりました。かろうじて左の写真ではオリジナルのサドルがどの様な状態かが分かります。これは4弦を外してピンを差してみたところです。右の写真は交換用ブリッジピン2種。白いのはアイヴォロイド(樹脂)。ここではエボニー(本物の木)を採用します。MOPドット入りで、高級感があります。

SI-7.jpg

ピンには弦を逃がす溝を彫っておきます。ブリッジに溝を彫る場合もありますね。
私がたまたま溝無しピンを持っていたので、それを使う事になったワケです。

SI-6.jpg SI-5.jpg

ブリッジの追加パーツとは、なんぞや。写真の黒い板の事であります。
このパーツの狙いは、

(すみません、ここ、久米明調で読んでください。)
ブリッジの厚みに対してピン穴は結構低い位置にある。だから、サドル側のテンションが強いのだ。板で嵩上げしてピン穴位置を上げよう。ブリッジ上面まで上げたら、テンションが若干弱まるだろう。そうして、板をエボニーで作ればそれはアクセントとなって全体外観のイメージが向上するのだ。

と、いうものです。

この内容はOさんの提案をベースに考案したものです。実際やってみて、なかなか良い雰囲気になったと思います。Oさんには、まずこの段階で大雑把なイメージをお伝えしてOKを頂きました。

SI-8.jpg SI-9.jpg

さて、ここが正念場であります。逆台形断面で幅も不揃いなサドル溝を整形せねばなりません。
ルーターをセットして、ぶびびびいいいーーーーん!と溝を削り広げるのです。

作業自体はシンプルですが、これは気持ち的にキビシいのであります。なんたって、人様のウクレレに刃物を突き立てるワケです。これから人様の物になるのではなく、既に人様の所有物なのです。クシャミでもして「あふん」なんてルーターの軌道がズレたら、なんて想像すると・・・ おお、さぶ。

SI-10.jpg SI-11.jpg SI-12.jpg

かくして、無事に溝を整形する事が出来ました。片側あたり0.3mm以内の削りです。
さて、サドルを製作いたします。ナットも作ります。エボニーと牛骨、2セット作りました。この個体の場合、牛骨の方が音の輪郭がハッキリと、なおかつ音量も若干上がります。エボニーはまろやかな印象でした。素材の色と音のイメージが正反対なのが印象的。写真では分かり辛いですが、サドルはコンペンセーションしてあります。
ちなみに、オリジナルの素材はコーリアンです。これも悪くはなかったですね。


5:1弦から4弦に向かって低くなっている第3フレットの調整

では、次の項目です。
今度はフレット業務。調整といいつつ、第3フレットを交換いたします。

SI-13.jpg SI-14.jpg SI-15.jpg

光を当てると、フレットが低くなっているのが確認出来ます。定規を載せると、1弦の通り道ではほとんど凸凹はありません。しかし、4弦側に向かうにつれて段々低くなっているのです。3フレだけ、なんでだろ。
ロンさんの時と同じく、グワシ!と抜去いたします。新しく打ち直したら上面を揃えて端末を丸めて、おしまい。1本だけなので楽であります。全てのフレットを軽くポリッシュしておきました。



6:ポジションドット素材の変更(樹脂をアバロンに)

SI-16.jpg

さあ最後の項目、ポジションドットを打ち変えます。オリジナルは2.5mm径の白いプラスティックですが、ロゼッタに合わせてアバロンにいたします。

SI-17.jpg SI-18.jpg SI-19.jpg

写真左:3mmドットでは差が分かりませんね。
写真中央:では、4mmでどうでしょ? んー、まあまあですね。
写真右:シングルを5mm、ダブルを4mmにしてみます。お、良い感じですよ。

という事で、4mmと5mmの組み合わせでいく事に決定です。こういう細かな仕様についてもOさんには確認をして頂きました。デジカメ写真はウェブでやり取り出来るので、こういう時に至極便利であります。

SI-20.jpg SI-21.jpg

仕様が決まれば後はやるだけ!って、また刃物を突き立てるのであります。ドキドキしてばかりであります。クシャミをするわけにはいかないので、呼吸停止状態で作業します。
さて、アバロンやMOPといった貝素材はキラキラとランダムに光るのがその美しさの秘密でもあります。別の見方をすれば、光って見えない事もあるのです。要は、向き次第で光り方が変わるのですね。なので、今回はそこのところに気を使ってみました。写真では分からないですが、ウクレレを演奏姿勢に構えた時に指板を覗くとポジションドットが光って見える様に向きを揃えてあります。僅かなサンディングで模様が激変するアバロンですから、完璧に光り方を揃える事は出来ませんでした。しかし、我ながら良い線いったかな?と思います。


という事で、以上で完成です!
シンプルな作業とはいえ、本当に色々と勉強になりました。
Oさん、私にこの様な機会を下さいまして、どうもありがとうございました!

(実際の作業は全く違う順序で進行しましたが、ここでは便宜上まとめ直してあります。)


作業終了後、カマカ・テナーと並べてみました。
SI-22.jpg SI-23.jpg

同じスケールのテナーですが、だいぶ印象が違います。なんとなーく、サニーDな感じの佇まいでもあります。後ろからグワッ!と迫られたら思わず道を譲っちゃう、みたいな。
でも、音はなかなか素直で聞き易い、上品な感じでありました♪


ラベル:ウクレレ リペア
posted by schuntama at 01:44| Comment(6) | TrackBack(0) | 直したウクレレ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
他の人が作った完成品に手を入れるというのはなかなか勇気の要る作業だったでしょうね。
僕なんか自分の作った物でさえ一度でき上がった物をなかなか修正できずにいますから(汗)
Posted by 蝠樂亭 at 2007年09月16日 22:15
蝠樂亭さん
そうですね、こういう事は個人的にあまり経験の無い事です。

このウクレレ、昨日無事に納品出来ました。
オーナーさんに受け取られて、弾いてみて、喜ばれる。
最高の経験です。
Posted by schuntama at 2007年09月17日 01:16
調整&改造、ありがとうございました。
本当にスバラシイ出来栄えで、ランクが上がったような気がします。

S.I.Ukulele(S.I.はイニシャルだそうです‥shu-sanのイニシャルと同じですが同一人物ではありません)はカマカの元職人が、リタイア後に趣味で作っていると聞いていますが、出来栄えは「よくできたサニーD」という感じでした。

今回、調整&改造してもらって「信じられないくらいよくできたサニーD」にレベル・アップしました。最高です。

これからもガンガン弾きますよぅーッ。
ありがとうございました!
Posted by おがわ at 2007年09月17日 09:55
おがわさん
今日はお互い出勤日ですね。(笑)
無事にお渡し出来て良かったです。

S.Iはイニシャルでしたか。そういえば親方と同じ!
元カマカの職人で工房を構える方はチラホラいらっしゃる様ですね。

短い間でしたがS.Iと一緒の暮らしは楽しかったです。
こちらこそ、ありがとうございました!
Posted by schuntama at 2007年09月17日 12:18
こんにちは。
セプターの件、お世話になり有難うございました。
さて、またまた質問で申し訳ありません。
一年ほど前に、アメリカの個人製作家が作ったパイナップルを手に入れました。
ボディの出来は良いのですが、ネックの成型がいまひとつしっくりと来なくて・・・、つまり一言で言えばラフな仕上がりです。
なにしろグリップが異様に太くて弾き難いのでなんとかしたいと考えております。
そこでお伺い致しますが、ネックを外さないで削ったりすることができるのでしょうか?
未経験素人のバカバカしい質問かも知れませんが、宜しくお願い致します。
Posted by ロン at 2007年09月29日 16:43
ロンさん
ネックが太いのは弾いていて疲れますね。何とかしたい所でありましょう。

ご質問の件ですが、一般的な構造であれば、これは可能です。
簡単に言えばグリップを削るだけですので、内容的にはシンプルです。
リペアマンに依頼される場合、好みのネック断面形状や塗装についてなど、
いくつかの項目を相談する事になると思います。
もしもご自分で削られるのでしたら、工具や作業手順など、色々と注意が必要になります。

どちらにしても、修繕の際には慎重に事に当たられます事をお奨めいたします。
この手の修理では、削った物は元に戻りませんので・・・。
Posted by schuntama at 2007年09月29日 17:36
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