2006年12月23日

膠を使ってみる

HYDE1.jpg膠(にかわ)。ハイドグルーとも呼びます。動物由来の成分で出来ていて、獣の皮や骨、あるいは魚から作られるものもあります。その接着力は強力で、硬化後はガラスの様な質感になります。弦楽器にとって重要な振動伝達を損なう事が少ないのでタイトボンドの様なPVAグルーと比較して有利であると言われています。また、加湿・加熱する事で再び溶解するのでリペアに対応出来ます。今なお現役の古楽器が存在するのは、膠で接着されているので時代を超えてリペアする事が可能だった為とも言われています。

私が製作を始めた頃はタイトボンドを使用していましたが、製作に慣れて来たところで膠に切り替える事にしました。やはり良いと言われるものは使いたい。基本的な動機はそこです。ウクレレ5号機の製作中から使い始めたので、その時に書いた記事をここに編集しておきます。タイトボンドも素晴らしい接着剤だと思いますが、膠で製作すると何故古来から使い継がれてきたのかが分かる気がします。膠はボンドと違ってシビアです。上手に使う事が出来る様になれば製作技術のステップアップにもなるのです。(私はまだまだ序の口ですが)

ということで、必要な物や使用状況などをまとめました。膠の面倒臭い(ニオイも臭い)印象から使用をためらっている方にとって、僅かでも参考になる事があれば幸甚です。

● 必要な道具
HYDE3.jpg私が使っている膠はLMIから購入しました。細かなフレーク状になっています。棒状の膠もありますが、いずれも使うには水に浸して、温めて、溶かさなければなりません。従って「グルーポット」というジャーの様な道具が必要になります。しかしこれは高価で、LMIではポット、ウォーマーのセットで$111.9もします。そこで私は、かの「クレーン」を参考に自作する事にしました。鶴田さん考案の「TSULTRA Q's Pot」がそれです。但し、ベンディング・アイロンを持っている事が前提となります。
鶴田さん、ありがとうございます。


HIDE4.jpgいつものホームセンターで素材を調達しました。これで¥3546。もっと安く出来る筈ですが今回はこれで。ポット製作の詳細は、是非「クレーン」の「弦楽器製作工具」をご覧下さい。




HIDE5.jpgポットが落っこちない様に、針金でゴトク風の支えを作りました。






HIDE13.jpg DIGI SCALE.jpg
他に必要な小道具です。温度管理の為の温度計、膠の塗布用の筆、ガラス容器、秤。温度計は料理用の物です。筆は文具店で買ったぺんてる。溶かす際の容器は耐熱・耐久性を考慮してガラスの物にします。溶かした膠の保管時に変質を防ぐ事も出来ます。秤は膠を水で戻す際に必要です。重量比で配分を決める為です。デジタル式が良いでしょう。更に接着面を温める為に白熱灯かドライヤー、接着中にハミ出た膠を拭き取る濡れ雑巾、ウェットティッシュも用意します。


● 水で戻す
HIDE6.jpg購入状態の膠は乾燥しているので水で戻して使います。容積比ではなく重量比で配分を確認するので秤を使用します。写真ではヴィンテージなアナログ秤ですが、デジタルの方が正確で使い易いです。




HIDE7.jpg配分は膠1:水1.8です。ここでは30gの乾燥膠を戻します。






HIDE8.jpg3時間以上経過した状態です。水を吸ってゼラチン状になりました。ここから加熱して溶かすのです。






● 湯煎で溶かす
HIDE9.jpgでは、ゼラチン膠を溶かします。最初はグルーポットにお湯を入れてウォーマーに乗せます。温度計で確認しつつ、℃65くらいになったら容器を入れます。使用中は約℃60で管理します。低温では固まり始め、高温だと劣化してしまいます。この辺が少し気を使う所です。


HIDE10.jpg溶けるとこの様になります。トロトロです。時折かき混ぜながら溶かしますが、パレットナイフ等があると便利です。




PG-134.jpg私は戻した膠を使い切る事はほとんどありません。余りは冷蔵庫で2〜3週間保存できますが、熱した膠を冷蔵する事を繰り返すのは鮮度面からお勧め出来ません。そこで、現在では最初に水で戻した時点で冷蔵しておき必要分だけ小分けにして溶かすスタイルにしました。


PG-135.jpg使い捨てのプラカップに少量の膠を入れて溶かします。小部品の接着の様な時間を掛けない作業ではこの方式が優れています。短時間なのでウォーマーも使いません。温度計が℃65になった時にカップを入れれば、作業中は℃60近辺で膠を保温しておけます。



この方法は、著名なリペアラーであるフランク・フォードさんのサイト「FRETS.COM」を参考にしました。膠に関する知識が豊富に紹介されていて大変助かりました。フォードさん、ありがとうございます。


● 接着にあたって
PG-179.jpg接着は時間勝負です。タイトボンドではゆっくりと作業出来ますが、膠の場合は下手すると塗布した瞬間から固まり始めます。そこで事前に白熱灯やドライヤー等で接着面を温めておく必要があります。そうする事で硬化を遅らせる事が出来ますし膠の馴染みも良くなります。


P1-118.jpgクランプも時間勝負です。膠がゆるいうちに手早く固定する必要があります。予めクランプ作業の動きを予行演習して適所に口を拡げたクランプを配置しておくとスムースに作業出来ます。




S5-83.jpg S5-84.jpg S5-85.jpg
剥がす時には接着部位を水分に浸します。ドライヤー等で加熱して、パレットナイフを接合部に差し込んで慎重に滑らせれば木部にダメージを与える事無く剥がす事が出来ます。残った膠はお湯で絞った雑巾で拭き取れます。


● 膠を使う価値
P1-61.jpg膠は硬化の過程で水分が蒸発するので収縮します。従ってパテの様な効果は望めません。木の削り粉を混ぜれば若干の目止め効果はありますが接着性能は低下します。また、収縮するという事は接着する部品同士を引き寄せる事にもなります。この特性を活かせば、カッチリとした接合が可能になります。逆に言えば、隙間だらけの合わせでは意味が無くなってしまいます。実際、私は何度も失敗を繰り返しています。しかし、ここがしっかり出来る様になれば、前述の様に製作技術のステップアップに繋がるのだと確信しています。手軽に強力な接着が出来るPVAグルーにも魅力はありますが、時間を掛けてでも膠を使いこなせる様になる事、これには有形無形の大きな価値があると思うのです。
ラベル:工具・道具
posted by schuntama at 15:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 工具類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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